精神障がい者は就職を考えるべきか

精神障がいを抱えている時点で、就職には大きなハンデがあると言わざるを得ません。特に、一般企業の障がい者雇用の多くは身体障がい者を対象としており、精神障がい者が受け入れられる職場は非常に限られています。

では、精神障がい者は就職を目指すべきなのでしょうか。結論としては、「人それぞれ」としか言えない部分が大きいです。

たとえば、これまで高いキャリアを積んできた人や特別なスキル・資格を持っている人は、障害者雇用で採用される可能性が比較的高いでしょう。そうした方は障害者雇用での就職を積極的に考えるべきです。

一方で、キャリアや特別な資格がなく、就労経験が乏しい場合は、就職は厳しい選択肢となります。無理に就職を目指すことで、さらに体調を崩してしまうリスクもあるため、自分に合った選択を見極める必要があるでしょう。


精神障がい者は働くべきなのか

そもそも、精神障がい者は「働くべき」なのでしょうか。この問いに対しても簡単には答えを出せません。

精神障がい者が一般企業でのクローズ就労(障がいを開示せずに働くこと)を望む場合、経営者から理解されず、職場で孤立する可能性があります。一方、オープン就労(障がいを開示して働くこと)であっても、身体障がい者と比べると優遇されているとは言いがたいのが現実です。

こうした背景を考えると、「障害年金や生活保護を受けて、家に引きこもっている方が社会のためになるのではないか」と考える人もいるかもしれません。

しかし、たとえ家に引きこもっていても、人間の本質として「社会に何か貢献したい」という気持ちは自然と湧いてくるものです。「働こう」と考えていなくても、時間があると「自分にできることは何か」と考えるのが人間の性質ではないでしょうか。

ただし、その「貢献」は必ずしも「働くこと」である必要はありません。なぜなら、働く以外にも社会貢献できる方法はたくさんあるからです。


働く以外での社会貢献

社会貢献は必ずしも雇用される形に限らず、ボランティア活動やSNSでのアドバイスなど、さまざまな形で実現できます。たとえば、過去に自分が苦しんだ経験をもとに、同じように悩む人に助言をしたり、地域のためになる活動をしたりと、働く以外にもできることはたくさんあります。

そのため、無職やニートでいることで罪悪感を抱いたり、「社会に貢献しなければ」と思ったりしても、それを「働くこと」に限定して解消しようとする必要はないのです。


障害年金や生活保護を活用した社会貢献

幸いなことに、日本には障害年金や生活保護といった社会保障制度があります。これらを「武器」として活用し、自分のペースで社会貢献を考えることも一つの方法です。

たとえば、障害年金で最低限の生活を保障してもらいながら、保護猫活動に取り組むというのも良い例です。最低限の生活が保障されているからこそ、自分にとって無理なく楽しめる活動に時間を費やせます。

特に、利潤追求を目的とする企業では手を出せない分野に、障害者としての立場を活かして取り組むことができます。企業は利益を生み出さなければならないため、ボランティア的な活動にリソースを割くのは難しいですが、私たちは利益を追求する必要がないからこそ、自由にそういった活動に携われるのです。


利益を生まないけれど必要な活動

保護猫活動のように、利益は出ないが社会に必要とされる活動は意外と多いものです。私たち障がい者にとって、それらの活動に取り組むことは「働くこと」と同じくらい、もしくはそれ以上に価値がある行動だと言えます。

通常のサラリーマンや一般労働者は、家族を養うために働き、利益を出すことが最優先になります。そのため、利益を生まない行動に時間を割くのは難しいのが現実です。しかし、社会保障制度によって最低限の生活が保障されている私たちは、その自由を活かして、利益を生まないけれど社会に必要な活動を進めることができます。


まとめ

精神障がい者が就職を目指すかどうかは人それぞれです。就職が難しい場合でも、働く以外の形で社会貢献する道があることを忘れてはいけません。

障害年金や生活保護といったセーフティネットを活用し、自分のペースで社会に役立つ活動を見つけて取り組むことで、無理なく充実した生活を送ることができるのではないでしょうか。

私たちが「利益を追求しない立場」を活かしてできることは、社会にとっても自分自身にとっても大きな意義を持つ行動だと言えるでしょう。

(Fさん談)